こんにちわ、救急医はるだんです。
メジャーリーグで活躍する大谷翔平選手やダルビッシュ有選手が大好きで、毎日画面越しですが楽しみのひとつです MLB.comを利用すると、少しお金はかかりますが、気軽に携帯で好きなメジャーの試合をいつでも観れるいい時代ですよね。
今回は現在絶好調のエンゼルス大谷翔平選手のような「二刀流」(Two way player)が医師でも可能なのかどうかを検証してみたいと思います。
(医療従事者の方が理解しやすい記事ではありますが、医療従事者ではない方にも是非読んでいただいて、自分がかかる医療者の専門性などを考えるきっかけになってくれればと思います。)
とはいっても、いろんな二刀流がありますね。それぞれ検討してみたいと思います。

1:専門医 の二刀流
例えば、自分の場合救急専門医X集中治療専門医の二刀流です。専門医をさらに複数持っている先生方も実際にたくさんいます。この専門医の二刀流に関しての自分の意見は、
「2つの専門職の類似度が近ければ可能、ただし現役でなければならない」
です。
例えば、「消化器内科専門医X内視鏡専門医」の二刀流。これは可能ですよね。専門医2つですが、片方はもう1つの枠にすっぽり入っているようなパターンです。野球で言うと、外野手がライトやったりセンターをやるみたいな感じでしょうか。なので、そもそも二刀流とはいえないよというツッコミが入ると思いますが、消化器内科専門医=内視鏡専門医ではありませんので、医学の中では二刀流ということとします。
では、自分のような「救急専門医X集中治療専門医」はどうか。これは片方がもう片方にすっぽり入っているわけではなく、違う領域です。しかし、病院にもよりますが、救急から集中治療として連続してみることが多かったり、特定の臓器や疾患に偏らない部分、全身の生態侵襲学という医学的な観点からも、共通する部分があります。野球でいうと、普段セカンドの選手がサードをやる感じでしょうか?(野球に詳しい方違うと思われるかもしれません。。。勝手な解釈です。)外野内の移動より少し難易度が上がるイメージです。可能だけれども、ギリギリのライン。同じ努力量なら、それぞれ1つを専門にしている人の方が、より上級者であろう二刀流です。
もっと離れると、どうでしょうか。例えば「消化器内科専門医X救急専門医」。ここまでくると非常に難しいと思います。重なる領域がさらに狭まり、労働環境として現在進行形で両方の経験を広く積むのが非常に難しいからです。おそらく、このパターンでは、以前どちらかをやっていて、現在はもう片方に従事しているパターンが現実です。野球でいうと、甲子園ではピッチャーしてたけど、プロになってからは野手です、という感じです。もちろん過去の経験は貴重ですが、医療の進歩は早いので、現在進行形で経験をしていないと厳しくなってくると思います。
まとめると、臨床における「専門医の二刀流」は、労働環境として現在進行形で行う必要があるため、その類似性が二刀流継続には必要かなと思います。
2:臨床と研究 の二刀流
次に臨床医と研究医の二刀流です。いわゆるphysician-scientistですね。これは
「環境を選ぶが、可能」
と思います。
領域の離れた臨床部門の二刀流と違い、「臨床X研究」の二刀流は、並行して行える環境を提供している場所が探せばあるからです。ただ、あくまで「環境を選ぶ」の条件つきです。どこでもできるわけではなく、実際に臨床が多忙すぎて研究に割く時間がないという先生方は非常に多く存在しています。または研究における良い指導者(メンター)がいない場合もあるでしょう。この二刀流の成功の鍵は「環境」です。野球でいえば所属するチームを選ぶことです。元々外野手をやっていた選手を時折ファーストとして使ってくれるチームなのかどうか。もしこの二刀流を日本で行いたいなら、残念ながら環境を選択しなければなりません。
特に初心者に関しては、臨床と研究、どちらにどれだけのエフォート(時間)を割くのかも重要です。よくあるのは臨床9割、研究1割りのパターンですが、研究初心者にこれはお勧めしません。いつまでたっても研究の質が上がらない原因となります。初心者は、臨床家の研究との二刀流は、研究に割くエフォートをできるだけ高めに設定すべきと思います。研究の基礎的な部分の土台作りを経験すれば、その後も長期的に役立つので、この二刀流の成功の為には、一定期間臨床から離れて研究のみに従事する期間をとるのが一番良い選択かなと思います。
3:医師と臨床・研究以外の領域 の二刀流
これから日本でも増加してくると思われる二刀流です。医師x起業家、医師x企業人、医師xYou tuber。。。もちろん
「可能」
ですね。
医師の強みは、「資格をとるための障壁が厚い」ことだと思います。要は、医師が企業に務めることは、(実際に仕事ができるかどうかは別として)すぐできますが、企業人が医師には法律的にもすぐにはなれないということです。医学部に合格し、さらに6年間を過ごして、国家試験に合格する必要があります。この参入障壁がこの二刀流の希少価値を大きく高めてくれます。医療業界に進出したい企業はたくさんあっても、医療の実際の現場での問題点や医学知識の使い方などがわかるのは臨床家のみです。臨床能力そのものではなく、臨床をしているという経験自体が企業人にとっては得難い価値なのかなと思います。野球でいうと、どんなにコントロール悪くても100マイル/hの直球を投げれればスカウトの目にとまる、そんな感じでしょうか。ただ、この二刀流も、勉強する範囲が広がるので、臨床家としての能力とのバランスが必要です。野手をやっていた経験があっても、守備はもうせず打撃専門DHになって、投手を並行して行う決意をせねばなりません。この「大谷型二刀流」とも呼べるこれまでの臨床医の枠を超えた新しいタイプの二刀流を目指す医師が今後ますます増えていくのではないかと推察しています。
以上、「医師の二刀流は可能か」について、考えてみました。
大谷翔平選手のすごいところは、投手と打者の二刀流をやっていることではなく、「どちらも超一流でやっている」ということが歴史的だということですね。医療界でもいろいろな二刀流がありますが、どちらも超一流というのは非常に困難だということは間違いありません。ただプロの野球界とは違うので、それぞれの領域が平均以上の二刀流の人材もまた価値が高いのかなとも思います。二刀流を目指すのか、あるいは1つの領域に絞ってその専門性で高みを目指すのかは、臨床医それぞれの好み次第かなと思います。
本日の格言
It’s a knack to strike it to a superficial place by the defense.
So I strike it to the outside of the hall.「守備の甘いところへ打つのがコツなんだ。だから俺は場外へ打つ」
George Herman Ruth, Jr.(ジョージ・ハーマン・ルース・ジュニア)
通称 ベーブ・ルース(Babe Ruth)
人生の場外ホームランかっ飛ばしてやりましょう
それではまた