高齢者在宅医療 -ドラマ「俺の家の話」から考える-

医療×エンタメ

こんにちわ、救急医はるだんです。

今回はテレビドラマ編です。つい最近みたドラマの中で、面白かったドラマの1つであるTBSの「俺の家の話」から、高齢者の在宅医療について考えてみました。

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「俺の家の話」第8話のワンシーン(C)TBS  https://www.tbs.co.jp/oreie_tbs/gallery/

「俺の家の話」は、TOKIOの長瀬智也さんのラスト出演ドラマとしても反響のあるドラマですね。内容は一言で言うと、ドタバタお家騒動の話なんですが、とにかく笑いと感動を両方同時に味わえる素敵な話なんです。出演する役者さんの演技も素晴らしく、泣かされまくりました。最終回にはびっくりな展開も待っています。まだ観ていない方は是非、ご覧になってください。

そんな「俺の家の話」ですが、西田敏行さん演じる寿三郎の在宅での認知症介護、高齢者医療の問題も、非常によく描写されています。

特に印象に残っているのは、9話での寿三郎が脳梗塞で倒れてしまった後のエピソード。

(ここからは一部ネタバレを含みます)

寿三郎は在宅での医療を希望し、家族に囲まれ、励ましを受けながら治療します。家族それぞれが励ましの言葉をかけるのですが、その励ましの内容によって、寿三郎の脈拍は上がったり下がったりと反応します。が、長男の寿一だけ、かける言葉が見つかりませんでした。しかし、ラストでは寿一が、自分がスーパー世阿弥マシンであったことを皆に明らかにして、スーパー世阿弥マシンのキャッチコピー「肝っ玉、しこっ玉」で寿三郎を励まし、家族みんなで合唱すると、寿三郎は奇跡的に一命を取り留めるという感動エピソードです。(文章で書いてもいまいち感動は伝わりにくいですね。。。)寿一は、このエピソードを、「俺の家の奇跡」と表現しています。

このエピソードから高齢者医療について考えた時、自分は真っ先に「人生会議」ACP: Advanced Care Planning ともいいます)の重要性が浮かびました。すなわち、人生の最終段階に、健康な状態の時からどの場所(病院なのか自宅なのか施設なのか)で、どのような検査・治療を受けたいかを本人、家族、医療者で前もって話し合っておくことです。お笑い芸人の小藪さんのポスターで、話題になったことで記憶にある方も多いと思います。寿三郎は前もって、自分の意志を明確にしていました。

医療は患者さんの余命を伸ばす為だけにあるのではありません。個々の人生の旅路をどう締めくくるのか、それを決めるのは医療者ではなく、実際にその人生を生きている本人であるべきです。本人がしっかりと意志を表明し、それに準じた最適な医療サポートを医療者が行うことが、高齢者医療で最も大事なことなのだと思います

自分は週に1回施設や自宅の往診の仕事をしています。病院を出て、施設や自宅で行われている医療に触れてみると、現在は在宅でできる医療範囲は拡大しているので、病院での治療に近づいてきているなと感じます。選り好みはできませんが、点滴、抗生剤の投与、採血検査も可能です。在宅医療の選択肢が以前より増えています。最近では、DNH(Do not hospitalization)と言って、病院に入院しての治療は望みませんという意思表示を行う方もいます。

病院に勤務する救急医としても、高齢者患者の治療では、「疾患の治癒だけではなく、その患者さん(と家族)のその後の生活に思いを馳せること」も重要です。例えば、発熱で来院された患者さんで肺炎と診断された場合、若年者と比較して重症化のリスクが高いことを考えると肺炎治療を考えれば、入院が妥当と考えるかもしれません。しかし、入院することによる弊害も同時に考える必要があります。高齢者は入院という環境変化に弱く、生活レベルの低下、認知症の進行などが起こりえます。「入院して肺炎は治癒しましたが、その後自宅での生活はできなくなりました」という状況では何のために治療したのかということになります。もし在宅で肺炎治療が完遂できそうなら(重症度も低く、家族のサポートや社会的サポートが期待できそうなら)その選択肢をとる判断をすることも重要だと思います。 

どんな形であれ、患者さん自身のautonomy(オートノミー:自身の意志による決定)が尊重された医療が展開されることが、高齢者医療には最も重要なのだと思います。

本日の格言

『Chance favors the prepared mind.』                         (幸運は用意された心のみに宿る

-Louis Pasteurルイ・パスツール

(原文はフランス語です。)

健康な時にはなかなか考えづらいと思いますが、人生の最後をどのように過ごされるのか、前もって人生会議をして、準備をしておくことはとても重要なことですね。