こんにちわ、救急医はるだんです。
今回はreview論文(ある題材に関して、今わかっていること(研究成果など)をまとめてくれたもの)を読んで、みんなで健康になろうシリーズです。シリーズ第一回は、世界中で愛される飲料であるコーヒー(カフェイン)と健康への影響についてです。書いてたら長くなってしまったので、総論編と各論編の2部作にしています。一緒に勉強していきましょう。
今回読ませていただいた論文はこちらになります。
Coffee, Caffeine, and Health. van Dam RM, Hu FB, Willett WC. N Engl J Med. 2020 Jul 23;383(4):369-378.
1:カフェイン

・コーヒーの主成分はカフェイン
・カフェインにはコーヒーや茶、カカオビーンズ(チョコレートの原料)など植物由来のものと、合成されたものがある。合成カフェインはエナジードリンクや倦怠感回復用の錠剤として利用されている。
(💁♂️カフェイン錠剤は自殺目的によく使用され、問題になっていますね。ERでもよく経験します)
・(一般利用)覚醒度の向上、仕事の生産性の向上
(💁♂️確かに、データ解析とかの時ってコーヒーあると進む感じがするんですよね。)
・(医療利用)未熟児の無呼吸の治療薬、鎮痛剤との併用での鎮痛管理目的
(💁♂️未熟児の無呼吸の治療薬としての利用は知りませんでした。。)
・カフェイン含有量は、コーヒー・エネジードリンク・カフェイン錠剤 > お茶 > コーラなど清涼飲料水
例:
コーヒーショップでのコーヒー:235mg/12 oz (355ml)
インスタントコーヒー:63mg/8oz (235ml)
エナジーショット:200mg/2oz (59ml)
緑茶:28mg/8oz (235ml)
コーラ: 32mg/12 oz (355ml))
(💁♂️コーヒーは入れ方や種類によってもカフェイン含有量は当然変わってきます。)
・アメリカでは成人の85%が毎日カフェインを摂取している。平均摂取量は1日135mgで標準カップ(8oz =235ml)で約1.5杯。特に、35-49歳では毎日平均188mgのカフェインを摂取している。
(💁♂️よくアメリカのドラマとかみてると、大きなマグでコーヒー飲みながら話してるシーンとかみますよね。この年代に多いのは働き盛りでストレスが多いからでしょうか。)
2:コーヒーに関する研究成果の解釈においてまず注意すべきこと

・コーヒーには、カフェイン以外にも数百種類の他の化合物が含まれていることに注意。
(ポリフェノール、メラノイジン、ジテルペンカフェストール、マグネシウム、カリウム、ビタミンB3…)
(💁♂️これらの化合物には酸化ストレス軽減や腸内マイクロバイオームの改善、さらにグルコースや脂肪代謝へ影響があるようなので、コーヒーに関する研究ではカフェインそのものの効果をみているのではない可能性があることに、論文では警鐘を鳴らしています。)
3:カフェインの代謝

・食後ほぼ45分以内に吸収が完了→血中濃度は15分から2時間以内がピーク。
・肝臓で、チトクローム P―450(C Y P)酵素によって分解される。 カフェイン→パラキサンチン・テオフィリン・テオブロミン→尿酸と代謝とされ、尿に排出される。
(💁♂️カフェイン中毒患者の症状は、テオフィリン中毒の患者と似ています。臨床的に意義があるかはさておき、血中テオフィリン濃度測定をカフェイン血中濃度測定の代用として測定する先生もいますね。)
・カフェインの代謝酵素の活性は一部遺伝性があり、カフェインの半減期(2.5−4時間)にも個人差が大きい。
・半減期が短くなる(カフェインの効果がなくなりやすい)要因
喫煙(半減期が1/2に)
・半減期を長くなる(カフェインの効果が持続しやすい)要因
新生児(半減期:80時間)
経口避妊薬(半減期が2倍に)
妊娠(第3期で半減期が15時間)
キノロン系抗生剤
冠血管系の薬剤
気管支拡張薬
抗うつ薬
(これら薬剤は、カフェインと同じチトクローム P―450(C Y P)酵素が代謝に関わる)
(💁♂️逆に、これらの薬剤を使用中の患者では、カフェイン摂取やコーヒー摂取量の大きな変化がこれらの薬剤の代謝にも影響を与える可能性があるということです。)
4:カフェインの脳への良い効果

・睡眠を引き起こす物質「アデノシン」に、カフェインは分子構造がそっくり。
カフェインはアデノシンレセプターにくっつき、アデノシンの効果を阻害する。
→眠くなくなる(覚醒度が上がる。倦怠感が減る。反応時間が減少する。)
・40-300mgのカフェインでアデノシンの効果を抑制できると言われている。
(💁♂️人により幅はありますが、前述の各飲料別カフェイン量からみても、お茶やコーラでは足りなくても、コーヒーなら通常量以上で覚醒度が上がる効果が期待できそうですね。)
・長時間でかつ刺激の少ない状況(長時間のドライブ、飛行機内など)において、コーヒーで活力の向上が得られる。
(💁♂️自分がよく作業するデータの整形なんかも、まさに刺激が少ない、退屈な作業なので、コーヒーはすごく助かってます。)
・カフェインは他の鎮痛薬との併用下で、鎮痛にも使用される。
(💁♂️19の研究のreviewで、100-130mgのカフェインを鎮痛薬に追加すると、適度に良好な鎮痛が得られた患者数が増加したという報告があります。ただし、コーヒー単独での鎮痛効果ではないですよ。)
ただし・・・
・カフェインは長期間の睡眠不足による活動度の低下を補うことはできない。
(💁♂️睡眠不足の人は、コーヒー飲んでもダメです。)
・1日の最後にカフェインを摂取すると、睡眠の質が下がる。
(💁♂️睡眠は大事ですので、夜になったらコーヒーは程々にしましょう。)
ので注意が必要です。
5:カフェインの脳への悪影響

・高用量(1回200mg以上や1日400mg以上)で不安が増加する(個人差は大きい。特に、不安症や双極性障害患者など元々感受性が高い人で起こる。)
(💁♂️不安な症状があるときに、コーヒーを大量に飲んで落ち着こうとするのは逆効果かもしれません。)
・非常に高濃度のカフェイン(1.2g(=1200mg)以上)で、中毒症状(落ち着きのなさ、興奮、思考や会話の乱れなど)が出始める。10-14gで致死的となる。
・カフェイン中毒死のほとんどは錠剤やサプリメントによるもの
(💁♂️コーヒーで致死量のカフェインを摂取するには標準的なコーヒーカップで75−100杯分。こんなに一度に飲めないですよね。)
・ただし、エナジードリンク/ショットとアルコールとの合わせ技により致命的になる症例の報告は複数あり。
(💁♂️エナジードリンクは青少年に人気があり、含有量を知らないで、アルコールや激しい運動とともに大量のカフェインが一気に摂取されるのでカフェイン耐性が追いつかないことが理由として挙げられています。また、エネジードリンクの他の成分との相乗効果のの可能性もあります。アルコールと一緒にエナジードリンクを飲むことは控えましょう。)
・カフェイン中止による離脱症状もあり。症状としては、頭痛、倦怠感、覚醒不良、うつ。典型的にはカフェイン離脱から1-2日がピークで、2-9日程度続く。カフェイン摂取を徐々に減少させることによって離脱症状を減らすことができる。
(💁♂️何故かはわかりませんが、インフルエンザのような症状がカフェイン離脱で起こることもあるようです。
コーヒー・カフェインの健康への影響(総論)は以上になります。次回はあまり知られていない脳以外への影響(循環系、代謝内分泌系、癌、妊婦への影響など)を各論編でまとめたいと思います。
本日の格言:
The powers of a man’s mind are directly proportioned to the quantity of coffee he drinks.
「人間の意思の力はその人が飲んだコーヒーの量に比例する」
James Mackintosh (ジェームス・マッキントッシュ)
でも、飲み過ぎは禁物ですよ。
それではまた👋
コメント