こんにちわ、コーヒー大好き、救急医はるだんです。
前回は、コーヒー・カフェインの健康への影響Part 1として、カフェインやその代謝、中枢神経系への影響を一緒に学びました。

今回はあまり知られていない、中枢神経系以外へのコーヒー・カフェインの影響について、一緒に勉強していきましょう。
今回読ませていただいた論文はこちらになります。
Coffee, Caffeine, and Health. van Dam RM, Hu FB, Willett WC. N Engl J Med. 2020 Jul 23;383(4):369-378.
1:血圧、血中脂質、心血管疾患への影響

・単独のカフェイン摂取では短期間のみエピネフリンレベルと血圧を上昇させる可能性がある。
・ただし、カフェイン入りのコーヒーで行われた試験では血圧への影響は認められていない。
(💁♂️コーヒーの他の成分(例えばクロロゲン酸)が血圧上昇への抑制効果を持っているから?)
・濾過されていないコーヒーに高濃度含まれているカフェストールはコレステロールを上昇させる。
・カフェストロールの濃度は濾過されているコーヒーでは少ない。インスタントやパーコレータによるコーヒーでは無視できるレベルの濃度である。
(💁♂️エスプレッソのカフェストロールの濃度がその中間程度のようです。)
・あるRCTでは、濾過されていないコーヒーの大量の摂取で、濾過したコーヒーと比較して、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL)値が上昇(17.8 mg/dl)し、心血管イベントのリスク11%増加すると推定された。
(💁♂️濾過されたコーヒーでは血中コレステロール値は上昇しません。 血中コレステロールの観点からは、無濾過コーヒーの摂取は控えて、エスプレッソベースのコーヒーはほどほどにすることがスマートでしょう。)
・濾過されたコーヒー摂取ならば、1日あたり標準的サイズで6杯まで摂取しても、心血管疾患のリスクは増加しないことが多くの前向き研究で示されている。
(💁♂️因果関係は不明ですが、むしろコーヒーの摂取は冠動脈疾患のリスク減少と相関しているという報告があります。冠動脈疾患、脳卒中、血管系疾患による死亡とコーヒー摂取の間にも逆相関関係が認められているようです。)
2:体重管理、2型糖尿病への影響

・カフェイン摂取は、交感神経系刺激を介して脂肪組織におけるプロテイン-1の発現の抑制する。これは、食欲の低下、基礎代謝率増加、熱発生の増加を誘導し、エネルギーバランスを改善する可能性がある。
・カフェイン摂取による24時間エネルギー消費の5%増加、長期間の体重増加のわずかな減少、体脂肪率への緩やかな有益な効果が報告されている。
(💁♂️カフェイン単体では体重管理に有益な報告が多いですが、もちろんカフェイン源が甘い清涼飲料水やエナジードリンクだったり、砂糖を加えたコーヒーでは、過剰な体重増加につながる可能性があります。)
・カフェインの摂取は、短期的にインスリン感受性を低下させる。しかし、カフェイン入りおよびカフェイン抜きのコーヒー摂取は共に、果糖の過多摂取により肝インスリン抵抗性を低下させる。
・コーヒーの習慣的な摂取は、用量依存性に2型糖尿病のリスクを低下させることが、多くのコホート研究において一貫して示されている。また、カフェイン入りコーヒーでもカフェイン抜きコーヒーでも同様の結果が出ている。(💁♂️カフェイン以外のコーヒー成分が長期的な糖代謝へ有益なのかもしれません)
3:癌への影響

・多くの前向きコホート研究の結果から、コーヒーやカフェインの摂取は、がんの発生率の増加やがんによる死亡率の増加とは関連しないことが明らかになっている。
(💁♂️同じ嗜好品でもタバコとは違いますね。)
・コーヒーの摂取は、メラノーマ、非メラノーマ皮膚がん、乳がん、および前立腺がんのリスクをわずかに減少させることと関連している。
(💁♂️まだ、不確定な部分は非常に多いですが、コーヒーの場合、むしろ癌の発生を低下させることを期待させる前向きな報告は他にも散見されます)
・因果は不明であるが、コーヒー摂取と子宮内膜癌および肝細胞癌のリスクには強い逆相関関係がみられた。子宮内膜がんでは、カフェイン入りとカフェイン抜きのコーヒーで関連性はほぼ同じであったが、肝細胞がんでは、カフェイン入りのコーヒーで関連性が強かった。
4:肝疾患への影響

・コーヒー摂取は肝線維症や肝硬変のリスクを低下させる可能性がある。
(💁♂️カフェインはアデノシン受容体拮抗作用があるため、アデノシンによるコラーゲン生成やフィブリノゲン生成などの組織リモデリングを抑制し、肝線維症を予防する可能性があると考えられています。また、カフェイン代謝産物は肝細胞におけるコラーゲン沈着を減らします。)
・コーヒーポリフェノールは、脂肪恒常性の改善や、酸化ストレスを軽減することで、肝脂肪症や肝線維化を予防すると考えられている。(💁♂️カフェインやコーヒーポリフェノールが入っているコーヒーは、アルコールとは異なり、肝臓に優しい飲み物なのかもしれませんね。)
5:結石症への影響

・コーヒーの摂取は、胆石および胆嚢がんのリスク低減と関連している。
(💁♂️カフェイン入りのコーヒーの方がカフェイン抜きのコーヒーよりも関連性が高いことから、カフェインが保護的な役割を果たしている可能性が示唆されています。胆嚢液の吸収阻害、コレシストキニンの分泌増加による胆嚢の収縮促進が、コレステロール胆石の形成を防ぐと考えられています。)
・あるコホート研究では、カフェイン入りおよびカフェイン抜きのコーヒーの摂取は、共に腎臓結石のリスク低下とも関連していた。
6:パーキンソン病、うつ病、認知症への影響

・米国、欧州、アジアの前向きコホート研究で、カフェイン摂取量とパーキンソン病のリスクに強い逆相関があった。
(💁♂️カフェインレスコーヒーの摂取はパーキンソン病と関連していないことから、逆相関の原因はカフェインであることが示唆されているようです。動物モデルでもカフェインがパーキンソン病を予防したという研究があり、アデノシンA2A レセプター拮抗作用を介した経路がその機序として検討されています。)
・コーヒーとカフェインの摂取は、欧米のいくつかのコホートにおいて、うつ病と自殺のリスク低下と関連していた。ただし、摂取量が非常に多い(1日8杯以上)人には当てはまらない可能性がある。
(💁♂️1日8杯以上って相当です。。。)
・コーヒー摂取の認知症やアルツハイマー病リスクに関する関連性は一貫しておらず、不明である。
7: 死亡率への影響

・いくつかのコホート研究で、習慣的なコーヒー摂取は、摂取していない人と比較して、死亡率は同等または低下と関連していたという報告がある。
(💁♂️あくまで「相関関係」なので、「コーヒーを飲む習慣を作れば死亡率が低下する」という矢印が証明されているわけではないことには注意です。)
・ベースに慢性疾患を持っていたり、健康に対して自己評価の低い人たちを除いた参加者に限定した研究でも、コーヒーの摂取は死亡率の低下と関連していた。
・カフェイン入りまたはカフェインなしのコーヒーは同様に全原因死亡リスク減少と相関していた。
8: 妊娠中のカフェイン摂取の影響

・カフェインは胎盤を容易に通過する。
・母体と胎児のカフェイン代謝は遅いので、血中濃度が高くなりやすい
・カフェインは血中カテコラミンを増加させるので、子宮胎盤血管収縮から胎児の低酸素をきたすかもしれない。
・カフェインの摂取量が多いほど、出生時体重が低く、流産のリスクが高かったという前向き研究がある。
・低出生体重との関連には、明確な閾値はなく、用量依存性に見られた。
(💁♂️結果の解釈には注意が必要で、報告論文には喫煙や「つわり」との交絡や出版バイアスの可能性も指摘されています。しかしながら、少なくとも妊娠中にコーヒー摂取はなるべく控えた方がよさそうです。)
コーヒー(カフェイン)と身体への影響(まとめ)
Part1と合わせて、コーヒー(カフェイン)と身体への影響のまとめです。
脳神経系
・覚醒度上昇→精神的活動や活力の向上。
・ただし、高用量では不眠、不安を誘導。
・うつのリスクを下げるかも。
・頭痛や他の疼痛に対するNSAIDやアセトアミノフェンとの併用で鎮痛効果を増強。
・パーキンソン病のリスクを減らすかも
呼吸器
・未熟児の無呼吸に有効。
・わずかに成人の肺機能を改善するかも。
肝臓
・肝臓の繊維化や肝硬変、癌を減らすかも。
循環器
・濾過されていないコーヒーでかつ大量摂取ならばコレステロール濃度を上げたり、心血管障害を増やすかもしれないが、濾過されたコーヒーならば心血管障害を増加させない。
代謝・内分泌
・カフェインは体重コントロールに有用かも。
・コーヒーは糖尿病リスク減らすかも。
妊娠中
・胎児の成長を阻害するかも。
・流産のリスク増やすかも。
コーヒー摂取は、適度な量(1日にカップ3〜5杯のコーヒー摂取程度)であれば、健康にとって有益な情報が多いようです。本文でも、「現在のエビデンスでは、病気の予防のためにカフェインやコーヒーの摂取を推奨することはできないが、妊娠・授乳中ではなく、特定の健康状態でもない成人であれば、コーヒーやお茶を適度に摂取することは健康的なライフスタイルの一部である」と締められています。
本日の格言:
Good communication is as stimulating as black coffee,
and just as hard to sleep after.
「良いコミュニケーションは、
ブラックコーヒーと同じくらい刺激的で、
同じように後で眠りにつくのが難しい」
Anne Morrow Lindbergh(アン・モロー・リンドバーグ)
それでは、また👋
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